道路のひび割れを Jev と Claude で判定

吉田 拓馬

この記事の要点

  • ひびの​有無は​ Jev で​足りた​:筆者が​正解を​付けた​107マスで、​Jev と​ Clairic の​組み合わせは​99マス、​Jev 単体は​94マス、​Claude Opus 5.5 は​95マスを​当てた。​1,000マスの​費用は​ Jev が​0.033ドル、​Opus が​5.5ドル​(約170分の​1)、​1マスの​時間は​0.2秒と​1.8秒だった。
  • 人の​点検と​比べると​:幅4m・長さ1kmを​4,000マスと​すると、​1車線100kmの​判定の​費用は​ Jev で​約13ドル、​Opus で​約2,200ドル。​測定車の​調査は​100kmで​255万円​(うち解析などの​内業が​100.4万円)、​筆者が​画面で​仕分けると​約330時間かかる​計算だった。​ただし​今回の​判定は、​正式な​ひび割れ率の​代わりには​ならない。
  • 本数は​どの​ AI も​苦手:​「2本以上」と​答えた​マスは​68〜100%が​本当に​2本以上​だったが、​2本以上の​マス26の​うち見つけたのは​9〜15マスだった。

道路の​ひび割れの​点検は、​人の​手間が​かかる​仕事です。​人が​路面の​ひびを​描き写す調査では​2.8kmに​30人で​2日かかり​(日本道路​(株)​技術研究所の​報告)、​測定車に​頼んでも​1車線100kmで​255万〜550万円かかります​(国土交通省​「点検支援​技術性能カタログ」の​個票、​255万円・550万円)。​この​「ひびが​あるか」の​判定を、​写真と​ AI で​どこまで​安く​・速く​できるかを​試しました。​道路の​写真を​約1m角の​マスに​切り、​マスごとに​ひびが​あるかを​ Jev​(TypeSafe の​判断特化 AI)​・Clairic​(Cloudflare の​抽出特化 AI)​・Claude に​聞いた​ところ、​筆者が​正解を​付けた​107マスの​うち、​Jev と​ Clairic の​組み合わせが​92.5%、​Claude Opus 5.5 が​88.8%、​Jev 単体が​87.9%の​マスを​当てました。​1,000マスあたりの​費用は​ Jev が​0.033ドル、​Opus が​5.5ドルで、​幅4m・長さ1kmを​4,000マスと​すると、​1車線100kmの​判定は​ Jev で​約13ドルです。​ただし​今回の​判定は​「ひびが​あるか」だけで、​点検で​使う​正式な​ひび割れ率の​代わりには​なりません。

使った​モデルは、​Jev​(jev-1.14.0)、​Clairic​(@cf/cloudflare/clairic)、​Claude Opus 5.5​(claude-opus-5-5)​・Sonnet 5.5​(claude-sonnet-5-5)​・Haiku 5.5​(claude-haiku-5-5)です。

何を​調べたか

道路の​ひび割れの​点検に、​いま人の​手間とお金が​どれだけかかっているか。​ここを​出発点に、​ひびの​判定を​写真と​ AI に​任せたら、​どれだけ安く​・速くなるかを​調べました。

この​記事は、​TypeSafe の​判断特化 AI​「Jev」を​業務に​組み込むと​汎用 LLM より​良く​・速く​・安く​判断できるか、を​試している​連載の​1本です。​これまでは​オセロ・交渉ゲーム・返品メールの​仕分けと、​文字の​判断を​題材に​してきました。​今回は​初めて​写真を​題材に​しています。

人と​測定車の​点検に、​どれだけかかるか

  • 人が​路面を​描き写す​(スケッチ法)​:日本道路​(株)​技術研究所の​報告​「路面性状測定車を​活用した​コンクリート舗装の​点検」では、​高速道路の​コンクリート舗装2,830mの​ひびを​人が​描き写すのに、​30人​(交通規制6人・位置出し3人・​路面の​調査21人)で​2日かかりました。​同じ​区間を、​測定車は​2人・10分で​測っています​(測定だけの​時間)。​細い​ひびの​幅まで​測った​調査なので、​ふつうの​アスファルトの​道路より​手間の​かかる​条件です。
  • 測定車に​頼む:国土交通省の​「点検支援​技術性能カタログ」の​個票では、​1車線100kmあたりの​標準的な​費用が、​ある​技術で​255万円​(うち解析・帳票作成などの​内業が​100.4万円。​個票、​令和8年3月時点)、​別の​技術で​550万円​(うち​路面性状の​解析が​270万円。​個票)です。​100kmの​標準日数は、​それぞれ16日と​40〜50日でした。​どちらも​ひび割れ率・わだち掘れ量・IRI​(縦方​向の​凸凹)を​まとめて​出す費用で、​ひびは​画像から​自動で​判定し、​後者は​自動の​結果の​誤りを​人が​目で​確かめる​工程を​含みます。
  • 市町村が​委託した​例:枚方​市の​「令和6年度 ​路面性状調査等業務委託」の​設計書では、​47.8kmの​測定と​解析に、​舗装の​計画の​更新や​報告書の​作成も​含めて、​業務委託料が​491.7万円​(税込)でした。​1kmあたり約10万円です。

点検できていない​道路が​多い

道路の​長さに​対して、​点検できる​人と​予算が​足りていない​ことが、​国の​資料から​想像できます。

  • 全国​約122万kmの​道路の​うち、​8割以上​(約103万km)が​市町村道です​(国土交通省 道路局​「道路構造物の​メンテナンスの​現状」​2017年5月30日、​PDF の​2ページ目。​高速自動車国道は​2016年4月、​ほかは​2015年4月時点)。
  • 市町村の​職員の​うち、​土木技術者は​約3%​(902,577人中26,044人)です​(同じ​資料の​ PDF の​12ページ目。​2015年4月1日時点、​政令市と​一部​事務組合を​除く)。
  • 地方​公共団体への​アンケートでは、​舗装の​点検を​していないのが​都道府県の​2割・市町村の​8割、​舗装を​いつ敷いたかを​把握​(記録)​していないのが​都道府県の​1割・市町村の​5割でした​(国土交通省​「点検要領策定に​関する​状況報告​(舗装)」​PDF の​3ページ目)。
  • 高速道路・直轄国道と、​点検を​している​多くの​都道府県は、​専用の​車両で​ひび割れ率などを​測っています。​一方で、​大部分の​市町村は​点検​(計測・記録)を​していません​(同じ​資料の​ PDF の​7ページ目)。

人の​手間が​かかり、​点検できていない​道路が​多い。​写真の​マスを​安く​判定できれば、​見て​回れる​範囲を​広げられるかもしれない、と​いうのが​出発点です。

参考に​した​数え方

舗装の​点検では、​路面を​0.5m角の​メッシュに​区切り、​メッシュごとに​ひびが​「面状」か​「線状」かを​見て、​ひびの​入った​面積の​割合​(​ひび割れ率)を​出す数え方が​あります​(​「大阪府舗装点検要領」​令和8年3月、​PDF の​15ページ目。​日本道路協会​「舗装調査・試験法便覧」の​規定に​よる​メッシュ法)。

今回は​これを​参考に、​マスごとに​「ひびが​あるか」と、​それに​近い​「1本か、​2本以上​(網の​目を​含む)か」を​聞きました。​ただし、​マスは​0.5m角ではなく​約1m角で​(0.5m角では​写真の​中で​小さすぎた​ため)、​分け方も​面状・線状ではないので、​この​結果から​正式な​ひび割れ率は​計算していません。

題材:RDD2022 の​写真を​約1m角の​マスに​切る

流れの図。RDD2022 の日本の道路の写真を、計算で約1m角のマスに切り、1マスずつ Jev・Clairic・Claude に聞いて、マスごとに「ひびあり」か「無傷」かを判定する

写真は、​道路の​傷みを​集めた​公開データ RDD2022 の​日本の​写真​(600×600px、​車の​ダッシュボードから​前を​撮った​もの)を​使いました。

RDD2022 の​写真には、​カメラの​高さや​向きが​付いていません。​そこで​全部の​写真で​次のように​仮定し、​地面の​上の​四角が​写真の​どこに​写るかを​計算しました。

  • カメラの​高さ:1.3m
  • 焦点距離:430px​(横の​画角で​約70度)
  • 水平線​:写真の​ちょうど​真ん中の​高さ

この​仮定で、​前方​2.5〜6.5m・左右±2m​(幅4m、​だいたい​車線1本ぶん)の​路面を​1m刻みで​16マスに​区切りました。​手前の​列の​両端は​写真の​外に​出るので、​1枚から​14マスです。​それぞれの​マスの​四隅を​写真の​上の​点に​直し、​320pxの​正方​形に​引き伸ばすと、​真上から​見た​マスの​画像に​なります​(320枚から​4,480マス)。

写真と、真上から見た約1m角のマス。写真の上に16マスの線を引き、そのうち写真に収まる14マスを真上から見た形に直して並べたもの。採点した手前の2マスを紺の枠で囲んでいる

採点したのは、​いちばん手前の​列​(2.5〜3.5m)の​真ん中の​2マスです。​奥の​列ほ​どぼやけるので、​まず判断の​つきやすい​マスで​試しました。​手前の​マスでも、​元の​写真の​中では​縦60pxほどしか​ありません。

正解は​筆者が​付けました

正解は、​筆者が​120マスに​1つずつ​「無傷/1本/2本以上​(網の​目を​含む)​/判断できない」を​付けました。​RDD2022 にも​傷みを​囲った​箱が​付いていますが、​マスの​割り方と​合わないので​使っていません。​120マスは、​RDD2022 の​箱で​「ひび」と​された​マス40・傷みの​注釈が​1つも​無い​写真の​マス40・​それ以外の​マス40から​選びました。

筆者の​ラベル マス
無傷 47
1本 34
2本以上​(網の​目を​含む) 26
判断できない​(車・​白線などで​路面が​見えない) 13

判断できない​13マスを​除いた​107マス​(ひびあり60・無傷47)で​採点しました。​細い​ひびか​影か、​1本か​2本かは、​付けながら​迷った​マスも​多く​ありました。

ラベル付けには​専用の​画面を​使い、​120マスを​6分ほどで​付け終えました​(画面を​開いてから​最後の​マスを​保存するまで​6分以内。​1マスあたり約3秒)。​あとの​「考察」で、​この​時間を​人の​判定の​目安に​使います。

各 AI に​聞いた​こと

どの​ AI にも、​同じ​マスの​画像を​1枚ずつ渡しました。​Jev と​ Clairic には、​次の​文脈の​文も​渡しています。

A square patch of road surface about 1 m by 1 m, seen from above. It was cut from a dashboard photo of a road in Japan and stretched to a square, so it can be blurry and the far edge is the least sharp. Judge the asphalt itself: a crack is a dark line with ragged edges in the pavement. Paint, a manhole cover, a shadow, water, tyre marks, a joint between lanes and a clean sealed line are not cracks.

Jev

  • モデル:jev-1.14.0​(画像の​入力は、​公式には​試作の​機能です。​TypeSafe の​資料に​「Images and Box questions aren't yet up to our standards to call ready for production.」と​あります。​ヘッダ TypeSafe-Danger-Zone-Images: true が​要ります)
  • 渡す​もの​:マスの​画像​(state に​1回だけ​入れ、​問いからは​名前で​呼ぶ)と、​上の​文脈の​文
  • 問い:は​い​/いいえで​答える​問い​(noul)を​4つ。​答えは​「はい」の​確率​(0〜1)で​返ります。
    • crack:​ひびが​1本以上​あるか​(Is there at least one crack in the road surface in `photo`?)
    • multi:​ひびが​2本以上か、​網の​目か
    • patch:補修した​跡​(新しい​アスファルトの​四角)が​あるか
    • notroad:大半が​路面以外​(車・縁石・歩道・​白線など)か
    ​
  • 1マスの​リクエスト:Jev 1本​(4問を​まとめて​聞く)。​入力は​1マス778トークンです。

点数には​ crack の​確率を、​「2本以上か」には​ multi の​確率が​0.5以上かを​使いました。​patch と​ notroad は、​ひびと​見間違えそうな​ものを​別に​聞く​ための​もので、​採点には​使っていません。

Clairic

  • モデル:@cf/cloudflare/clairic​(Cloudflare Workers AI。​Cloudflare の​ブログで​紹介された、​値を​抜き出すのが​得意な​モデル)
  • 渡す​もの​:同じ​マスの​画像と、​同じ​文脈の​文
  • 問い​:数で​答える​項目​(estimate)を​2つ。​ひびの​本数​(0〜6。​網の​目は​6と​数える)と、​壊れている​割合​(0〜100%)
  • 1マスの​リクエスト:Clairic 1本。​入力は​1マス488トークンです。

点数には、​本数の​答えと​一緒に​返る​平均​(mean)を、​「2本以上か」には​本数の​答え​(value)が​2以上かを​使いました。​壊れている​割合は​採点に​使っていません。

Jev+Clairic

Jev の​ crack の​確率に、​Clairic の​本数の​平均を​6で​割った​もの​(0〜1に​なる)を​足して​点数に​しました。​Jev は​「ありそうか」、​Clairic は​「何本​ありそうか」と、​違う​見方の​2つを​足す形です。​リクエストは​1マス2本​(Jev 1本・​Clairic 1本)です。

Claude​(Opus 5.5・Sonnet 5.5・Haiku 5.5)

  • モデル:claude-opus-5-5・claude-sonnet-5-5・claude-haiku-5-5​(思考の​深さ​(effort)は​モデルの​既定のまま)
  • 渡す​もの​:マスの​画像と、​次の​問い。​文脈の​文は​渡していません​(​「白線・補修の​継ぎ目・影は​ひびではない」とだけ​書いています)。

The image is a square patch of road surface about 1 m by 1 m, seen from above. It was cut from a dashboard photo and warped to a top-down view, so it can be blurry, and part of it may be a car, a painted line, a kerb or a shadow.

Answer about cracks in the road surface only (not painted lines, joints of patches, or shadows):

  • crack: your probability from 0 to 100 that there is at least one crack in the road surface.
  • multi: your probability from 0 to 100 that there are two or more cracks, or a net of cracks like alligator skin.
  • count: "0" (no crack), "1" (one crack), "2" (two or more, or a net), or "x" if the road surface cannot be judged.

Reply with only one line of JSON, nothing else: {"crack": <0-100>, "multi": <0-100>, "count": "<0|1|2|x>"}

  • 1マスの​リクエスト:Claude 1本。​入力は​1マス1,008〜1,033トークン、​出力​(考えた​分を​含む)は​平均24〜148トークンでした。

点数には​ crack を、​「2本以上か」には​ count が​ "2" かを​使いました。

共通の​条件

  • 判定の​閾値:どの​ AI も​マスごとに​「ひびが​ありそう」の​点数を​出すだけなので、​何点以上を​「ひびあり」に​するかの​閾値が​要ります。​点数の​物差しは​ AI ごとに​違う​(Jev は​確率0〜1、​Clairic は​本数の​平均0〜6、​Claude は​0〜100)ので、​同じ値の​閾値は​使えません。​そこで​閾値​その​ものではなく​決め方を​そろえ、​筆者が​「ひびあり」に​した​60マスを​ AI ごとに​点数の​高い​順に​並べ、​54番目​(9割)の​点数以上を​「ひびあり」に​すると​前もって​決めました。​どの​ AI も​「ひびの​マスの​うち54前後を​拾える​閾値」に​そろえて、​無傷の​47マスを​どれだけ​「ひびあり」と​言ってしまうかを​比べる​形です。​同じ​点数の​マスが​あると​54より​多く​拾います。​閾値は、​採点と​同じ​マスで​決めています。​結果と​して、​閾値は​ AI ごとに​次のようになりました。
AI 点数 閾値​(これ以上を​「ひびあり」)
Jev+Clairic P(​ひび)+本数の​平均÷6 0.46
Jev P(​ひび)​(0〜1) 0.24
Clairic 本数の​平均​(0〜6) 0.92
Claude Opus 5.5 crack​(0〜100) 20
Claude Sonnet 5.5 crack​(0〜100) 15
Claude Haiku 5.5 crack​(0〜100) 8
  • 送った​言語:問いと​文脈の​文は​英語です。
  • 時間:1マスの​中央値です。​Jev と​ Clairic は​ API の​往復の​時間、​Claude は​ Claude Code の​ CLI が​返す API の​時間​(CLI の​起動は​含まない)です。
  • 費用:トークン数×公式の​定価で、​請求額では​ありません。​単価は​100万トークンあたり、​Jev が​入力0.042ドル​(出力は​無料)、​Clairic が​入力0.10ドル、​Claude は​ Anthropic の​定価で​ Opus 5.5 が​入力4ドル・出力20ドル、​Sonnet 5.5 が​2ドル・10ドル、​Haiku 5.5 が​0.10ドル・0.50ドルです。​Claude は​キャッシュを​使わない​1回ずつの​呼び出しと​して​数えました。
  • Claude の​聞き方​:Claude Code の​ CLI から、​既定の​システムプロンプトと​道具を​外し​(システムプロンプトは​1行)、​画像を​メッセージに​入れて​1マス1​回ずつ​聞きました。​API を​直接呼ぶのに​近い形です。
  • 実験の​日:Jev と​ Clairic は​2026年11月2日、​Claude は​2026年11月3日です。

結果

結果のグラフ。正解の数(107マス中)、1マスの時間(中央値)、1,000マスの費用(定価、目盛りは10倍ずつ)を横棒で並べたもの。正解は Jev+Clairic 99・Opus 95・Jev 94・Clairic 91・Sonnet 91・Haiku 63。時間は Jev 0.2秒・Opus 1.8秒。費用は Jev 0.033ドル・Opus 5.5ドル

AI 正解​(/107) 無傷を​「ひびあり」​(/47) ひびを​「無傷」​(/60) AUC 1マスの​時間 1,000マスの​費用
Jev+Clairic 99 2 6 0.943 未計測 0.081ドル
Claude Opus 5.5 95 6 6 0.944 1.8秒 5.5ドル
Jev 94 7 6 0.940 0.2秒 0.033ドル
Clairic 91 10 6 0.926 0.4秒 0.049ドル
Claude Sonnet 5.5 91 11 5 0.933 1.2秒 2.3ドル
Claude Haiku 5.5 63 44 0 0.907 1.5秒 0.18ドル
  • 「ひびを​『無傷』」が​どれも​5〜6なのは、​ひびの​マスの​9割を​拾う​閾値に​そろえた​ためです。​差が​出るのは​「無傷を​『ひびあり』」の​ほうです。
  • AUC は、​ひびの​マスと​無傷の​マスを​1つずつ​取り出した​とき、​ひびの​マスの​ほうに​高い​点数を​付けている​割合です​(全部の​組で​そうなら​1、​で​たらめなら​0.5)。​判定の​閾値を​決める​前の、​点数の​並びの​良さを​表します。
  • Jev+Clairic は​ Jev と​ Clairic に​別々に​聞いたので、​合わせた​時間は​測っていません​(単体は​ Jev 0.2秒・Clairic 0.4秒)。
  • Haiku は、​無傷の​47マスの​うち32マスと、​ひびの​マスの​7マスに、​同じ​8と​いう​点数を​付けました。​ひびの​マスの​54番目の​点数が​ちょうど​8だった​ため、​閾値が​8に​なり、​8の​塊が​まとめて​「ひびあり」に​なっています。​閾値を​8の​塊の​すぐ上の​10に​すると、​ひびの​マス60の​うち53を​拾い、​無傷を​「ひびあり」としたのは​12マスでした。

判定の​例​(Jev)

Jev の判定の例。縦が筆者のラベル(ひびあり・無傷)、横が Jev の判定で、正解と不正解を2マスずつ並べたもの。正解は、はっきりした1本のひびと網の目のマス、何もない路面と白線のある路面。不正解は、細い2本のひびと端のかすかな1本を「無傷」としたマスと、舗装の継ぎ目とかすれた白線を「ひびあり」としたマス

Jev の​閾値​(P(​ひび) 0.24以上を​「ひびあり」)で、​正解と​不正解の​マスを​2つずつ​選んで​並べました。​参考に、​同じ​マスの​ Opus の​点数​(閾値は​20)も​添えています。

  • ひびありを​「ひびあり」​(正解)​:は​っきりした​1本の​ひび​(P(​ひび) 0.95)と、​網の​目​(0.98)は、​Jev も​ Opus も​高い​点数を​付けました。
  • 無傷を​「無傷」​(正解)​:​何も​ない​路面​(0.10)と、​白線の​ある​路面​(0.12)。​白線を​ひびと​取り違えてはいません。
  • ひびありを​「無傷」​(不正解)​:細い​2本の​ひび​(0.23)は​閾値の​すぐ下で、​Opus​(55)は​拾いました。​端のかすかな​1本​(0.21)は、​Opus​(12)も​見落と​しています。
  • 無傷を​「ひびあり」​(不正解)​:舗装の​継ぎ目の​線​(0.28)と、かすれた​白線​(0.36)。​どちらも​ Opus​(40・52)も​「ひびあり」に​していて、​ひびに​似た線に​引っぱられた​外れでした。

2本以上か​どうか

採点した​107マスで、​各 AI が​「2本以上」と​答えた​マスと、​そのうち筆者も​2本以上に​した​マスを​数えました​(Jev+Clairic は​本数の​答えを​持たないので​入っていません)。

AI 「2本以上」と​答えた​マス そのうち本当に​2本以上 当たった​割合 2本以上の​マス26の​うち見つけた​数
Jev 19 13 68% 13
Clairic 18 15 83% 15
Claude Opus 5.5 15 13 87% 13
Claude Sonnet 5.5 11 10 91% 10
Claude Haiku 5.5 9 9 100% 9

無傷の​マスを​「2本以上」と​答えた​ AI は​ありませんでした。​外れは、​筆者が​1本に​した​マスです。

分かった​こと

ひびの​有無は、​Jev でも​ Opus と​同じくらい​当たり、​費用は​約170分の​1

正解の​数は​ Jev+Clairic 99・Opus 95・Jev 94と​近く、​1,000マスの​費用は​ Jev 0.033ドル・Jev+Clairic 0.081ドルに​対して​ Opus は​5.5ドル​(Jev の​約170倍)でした。​1マスの​時間も、​Jev 0.2秒に​対して​ Opus 1.8秒です。​今回の​ケースでは、​精度は​維持しつつ、​全部の​マスに​聞いても​費用と​時間が​気にならない、と​いうのが​ Jev の​強みでした。

上位3つは​点数の​並びが​ほぼ​同じで、​正解の​差は​判定の​閾値しだい

AUC は​ Opus 0.944・Jev+Clairic 0.943・Jev 0.940で、​ほとんど​差が​ありません。​判定の​閾値を​「ひびの​マスで​54番目に​高い​点数」から​「55番目に​高い​点数」に​1つだけ動かすと、​無傷を​「ひびあり」とした数は​次のように​変わりました。

AI 54番目の​点数を​閾値に 55番目の​点数を​閾値に
Jev+Clairic 2 6
Claude Opus 5.5 6 16
Jev 7 7
Clairic 10 13
Claude Sonnet 5.5 11 11
Claude Haiku 5.5 44 44

数マスの​差は、​閾値の​位置の​揺れの​中に​入ります。​正解も​筆者1人が​付けた​ものなので、​この​107マスだけで​上位3つの​優劣は​言えません。​Haiku のように​同じ​点数を​多くの​マスに​付ける​ AI は、​閾値の​決め方に​よって​結果が​大きく​変わります。

本数は、​「2本以上」と​言えば​当たるが、​見落としが​多い

どの​ AI も、​「2本以上」と​答えた​マスは​68〜100%が​本当に​2本以上でした。​ただ、​2本以上の​マス26の​うち見つけたのは​9〜15マスで、​半分前後を​「1本」か​「無傷」と​答えています。​手前の​マスでも​元の​写真では​縦60pxほどで、​細い​ひびが​1本か​2本かは、​筆者も​ラベルを​付けながら​迷いました。​この​写真の​大きさでは、​目で​数えるのに​近い​判断の​限界に​近いのかもしれません​(推測です)。​Jev に​ついては、​TypeSafe の​資料​(Jev 1.13)にも​「jev-1.13 does not count reliably.」と​あります​(資料の​例は​文字などを​数える​もので、​写真の​ひびの​話では​ありません)。

場所を​絞って​聞く​ほど、​無傷を​「ひびあり」と​言う​割合は​小さかった​(条件の​違う​実験の​比較)

マスに​切る​前に、​Jev には​写真を​まる​ごと​見せて​「どこかに​傷みは​あるか」も​聞いていました。​傷みの​ある​写真の​9割を​「ある」に​できる​閾値で​比べると、​傷みの​ない​写真の​47%を​「ある」と​言いました。​RDD2022 の​箱の​周りを​切り出して​見せた​とき​(同じく​9割を​拾う​閾値)は、​傷みの​ない​ものを​「ある」としたのは​9%でした。​今回の​マスでは、​無傷の​47マスの​うち7マス​(15%)を​「ひびあり」と​言っています。

この​3つは、​写真も​正解の​付け方も​別々で​(写真まる​ごとと​切り出しの​正解は​ RDD2022 の​箱で、​注釈の​漏れも​混ざっています)、​見せる​範囲だけを​変えた​比べ方では​ありません。​それでも、​「写真の​中を​探させる」より​「場所を​決めて​具体的に​聞く」ほうが​当たりやすい​傾向でした。​マスは​計算で​機械的に​切れるので、​人が​「ここを​見て」と​指さなくても、​全部の​場所に​聞けます。

考察:人の​点検と​比べると

判定の​費用は、​人の​手間と​比べて​小さい

今回の​数字を、​1車線ぶんの​道路の​長さに​直しました。​幅4m・長さ1kmの​路面を​約1m角に​切ると​4,000マスです。​1,000マスの​費用と​1マスの​時間​(中​央値)から​計算すると、​次のようになります。​筆者が​ラベルを​付けた​ときの​1マス約3秒も、​参考に​並べました。

1車線100kmあたりの費用と、判定にかかる時間を、人・測定車と AI で並べた横棒のグラフ。費用は測定車の調査全体が16,000ドル(255万円)、うち解析などの内業が6,400ドル(100.4万円)、Opus 2,200ドル、Jev 13ドル。時間は筆者が目で仕分けると約330時間、Opus 約200時間、Jev 約24時間

判定する​人・AI 1kmの​費用 100kmの​費用 100kmを​1マスずつ順に​判定した​時間
Jev+Clairic 0.33ドル 33ドル 未計測
Claude Opus 5.5 22ドル 2,200ドル 約200時間
Jev 0.13ドル 13ドル 約24時間
Clairic 0.2ドル 20ドル 約43時間
Claude Sonnet 5.5 9.1ドル 910ドル 約140時間
Claude Haiku 5.5 0.71ドル 71ドル 約170時間
筆者​(画面で​仕分け、​参考) ― ― 約330時間
  • 測定車の​調査の​内業​(解析・帳票作成など)は、​100kmで​100.4万円でした。​比べる​ときだけ1ドル158円​(2026年11月2日の​レート)で​円に​直すと、​Jev の​13ドルは​約2,100円で​内業の​約500分の​1、​Opus の​2,200ドルは​約35万円で​約3分の​1です。
  • 筆者が​1マス約3秒で​仕分けると、​100kmで​約330時間​(1日8時間で​約42日)です。​Jev は​1マス0.2秒で、​1マスずつ順に​聞いても​約24時間でした。​同時に​何本も​聞けばさらに​短くなるはずですが、​測っていません。
  • Opus は​1マス1.8秒で、​筆者の​約3秒と​同じくらいの​速さです。​速さで​人と​差が​つくのは、​Jev の​0.2秒の​ほうでした。

残る​費用は、​写真を​撮る​ことと​人が​確かめる​こと

判定の​費用が​ほとんど​かから​なくなっても、​写真を​撮る​費用と、​AI が​「ひびあり」とした​マスを​人が​確かめる​手間は​残ります。​255万円の​測定車の​個票でも、​測定​(外業)が​54.6万円、​車と​装置​(機械経費)が​84.3万円で、​費用の​半分以上は​判定の​外に​ありました。​今回の​費用には、​写真を​撮る​費用を​入れていません。

人が​確かめる​手間は、​AI が​絞った​分だけ減らせます。​今回、​無傷の​47マスの​うち Jev が​「ひびあり」に​したのは​7マス​(15%)で、​ひびの​マス60の​うち54マスを​拾いました。​ただし120マスは​選んで​集めた​もので、​実際の​道路で​ひびが​どれだけ​あるかに​よって、​人が​見る​マスの​数は​変わります。

正式な​ひび割れ率の​代わりには​ならない

測定車は、​幅1mmの​ひびまで​見分けられる​ことを​確かめた​技術が​カタログに​載っています。​今回採点した​マスは、​元の​写真の​中で​縦60pxほどしかなく、​1画素が​路面の​約1.7cmに​あたります。​見ているのは​約1m角に​「ひびが​あるか」だけで、​0.5m角の​メッシュから​ひび割れ率を​出す正式な​点検の​代わりには​なりません。

一方で、​国の​アンケートでは​市町村の​8割が​舗装の​点検を​していませんでした​(上の​国の​資料)。​正式な​点検の​代わりではなく、​調査範囲拡大・調査間隔縮小を​狙った​軽微な​調査なら、​この​費用と​速さで​使える​余地が​ある、と​いうのが​今の​見立てです。

比較条件と​限界

  • 採点は​107マス​(ひびあり60・無傷47)だけで、​正解は​筆者1人が​付けた​ものです。
  • 120マスは、​RDD2022 の​箱で​「ひび」・注釈の​無い写真・​それ以外を​40ずつ​選んだ​もので、​実際の​道路での​ひびの​多さとは​違います。​無傷を​「ひびあり」と​する​数も、​実際の​道路では​変わるはずです。
  • 判定の​閾値は、​採点と​同じ​マスで​決めました​(甘めに​出ます)。
  • Jev と​ Clairic には​文脈の​文を​渡しましたが、​Claude の​問いは​それより​短く、​ひびではない​ものの​並びも​少なくなっています。
  • 写真は​ RDD2022 の​600pxの​ダッシュボードの​写真だけで、​採点は​いちばん手前の​列の​真ん中の​2マスだけです。
  • カメラの​高さ1.3m・水平線は​真ん中、を​全部の​写真で​同じと​仮定しました。​実際は​写真ごとに​違うので、​マスの​実寸は​ずれているはずです​(誤差は​測っていません)。
  • Jev の​画像の​入力は、​公式には​まだ​試作の​機能です。
  • 時間と​費用は、​今回の​呼び出し方での​値です。​費用は​定価からの​見積もりで、​請求額では​ありません。
  • 1kmあたり・100kmあたりの​費用と​時間は、​幅4m・長さ1kmを​1m角で​4,000マスとした​換算です。​写真を​撮る​費用は​入っていません。​採点したのは​手前の​列の​2マスだけで、​1kmぶんの​写真から​本当に​4,000マスを​判定できるかは​確かめていません。
  • 人と​測定車の​費用と​日数は、​条件の​違う​資料から​引いた​ものです​(高速道路の​コンクリート舗装、​ひび割れ率・わだち掘れ量・IRI を​まとめて​出す費用、​計画の​更新まで​含む委託)。​今回の​判定と​同じ​仕事の​値段では​ありません。​円と​ドルを​比べる​ところだけ、​1ドル158円​(2026年11月2日の​レート)で​換算しています。
  • 筆者の​1マス約3秒は、​マスに​切った​画像を​専用の​画面で​1人が​仕分けた​1回の​時間です​(画面の​起動から​最後の​保存までの​6分以内を​120マスで​割った​値)。​付けながら​迷った​マスも​多く、​正式な​点検の​目視とは​違います。
  • Claude は​最初​(2026年11月2日)、​Claude Code の​既定の​システムプロンプトと​道具を​付けたまま​聞いていて、​1マスの​換算額が​ Opus 0.19ドル・Sonnet 0.09ドル・Haiku 0.0047ドルと、​その​分が​大きく​乗っていました。​この​ページの​ Claude の​数字は、​すべて​11月3日に​聞き直した回の​ものです。
  • Jev・Clairic の​点数の​作り方​(Jev+Clairic の​足し算、​Clairic の​本数の​平均)と、​判定の​閾値の​決め方は​前もって​決めましたが、​比べた​組み方は​1通りだけです。
  • 記事の​図の​写真は、​RDD2022​(CC BY-SA 4.0)の​写真を​切り出し・​変形し、​マスの​枠を​描き足した​ものです。​写真を​加工した図は​ CC BY-SA 4.0 で​公開します​(RDD2022 の​配布元:RoadDamageDetector)。

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