道路の ひび割れを Jev と Claude で 判定
この記事の要点
- ひびの有無は Jev で足りた:筆者が正解を付けた107マスで、Jev と Clairic の組み合わせは99マス、Jev 単体は94マス、Claude Opus 5.5 は95マスを当てた。1,000マスの費用は Jev が0.033ドル、Opus が5.5ドル(約170分の1)、1マスの時間は0.2秒と1.8秒だった。
- 人の点検と比べると:幅4m・長さ1kmを4,000マスとすると、1車線100kmの判定の費用は Jev で約13ドル、Opus で約2,200ドル。測定車の調査は100kmで255万円(うち解析などの内業が100.4万円)、筆者が画面で仕分けると約330時間かかる計算だった。ただし今回の判定は、正式なひび割れ率の代わりにはならない。
- 本数はどの AI も苦手:「2本以上」と答えたマスは68〜100%が本当に2本以上だったが、2本以上のマス26のうち見つけたのは9〜15マスだった。

道路のひび割れの点検は、人の手間がかかる仕事です。人が路面のひびを描き写す調査では2.8kmに30人で2日かかり(日本道路(株)技術研究所の報告)、測定車に頼んでも1車線100kmで255万〜550万円かかります(国土交通省「点検支援技術性能カタログ」の個票、255万円・550万円)。この「ひびがあるか」の判定を、写真と AI でどこまで安く・速くできるかを試しました。道路の写真を約1m角のマスに切り、マスごとにひびがあるかを Jev(TypeSafe の判断特化 AI)・Clairic(Cloudflare の抽出特化 AI)・Claude に聞いたところ、筆者が正解を付けた107マスのうち、Jev と Clairic の組み合わせが92.5%、Claude Opus 5.5 が88.8%、Jev 単体が87.9%のマスを当てました。1,000マスあたりの費用は Jev が0.033ドル、Opus が5.5ドルで、幅4m・長さ1kmを4,000マスとすると、1車線100kmの判定は Jev で約13ドルです。ただし今回の判定は「ひびがあるか」だけで、点検で使う正式なひび割れ率の代わりにはなりません。
使ったモデルは、Jev(jev-1.14.0)、Clairic(@cf/cloudflare/clairic)、Claude Opus 5.5(claude-opus-5-5)・Sonnet 5.5(claude-sonnet-5-5)・Haiku 5.5(claude-haiku-5-5)です。
何を調べたか
道路のひび割れの点検に、いま人の手間とお金がどれだけかかっているか。ここを出発点に、ひびの判定を写真と AI に任せたら、どれだけ安く・速くなるかを調べました。
この記事は、TypeSafe の判断特化 AI「Jev」を業務に組み込むと汎用 LLM より良く・速く・安く判断できるか、を試している連載の1本です。これまではオセロ・交渉ゲーム・返品メールの仕分けと、文字の判断を題材にしてきました。今回は初めて写真を題材にしています。
人と測定車の点検に、どれだけかかるか
- 人が路面を描き写す(スケッチ法):日本道路(株)技術研究所の報告「路面性状測定車を活用したコンクリート舗装の点検」では、高速道路のコンクリート舗装2,830mのひびを人が描き写すのに、30人(交通規制6人・位置出し3人・路面の調査21人)で2日かかりました。同じ区間を、測定車は2人・10分で測っています(測定だけの時間)。細いひびの幅まで測った調査なので、ふつうのアスファルトの道路より手間のかかる条件です。
- 測定車に頼む:国土交通省の「点検支援技術性能カタログ」の個票では、1車線100kmあたりの標準的な費用が、ある技術で255万円(うち解析・帳票作成などの内業が100.4万円。個票、令和8年3月時点)、別の技術で550万円(うち路面性状の解析が270万円。個票)です。100kmの標準日数は、それぞれ16日と40〜50日でした。どちらもひび割れ率・わだち掘れ量・IRI(縦方向の凸凹)をまとめて出す費用で、ひびは画像から自動で判定し、後者は自動の結果の誤りを人が目で確かめる工程を含みます。
- 市町村が委託した例:枚方市の「令和6年度 路面性状調査等業務委託」の設計書では、47.8kmの測定と解析に、舗装の計画の更新や報告書の作成も含めて、業務委託料が491.7万円(税込)でした。1kmあたり約10万円です。
点検できていない道路が多い
道路の長さに対して、点検できる人と予算が足りていないことが、国の資料から想像できます。
- 全国約122万kmの道路のうち、8割以上(約103万km)が市町村道です(国土交通省 道路局「道路構造物のメンテナンスの現状」2017年5月30日、PDF の2ページ目。高速自動車国道は2016年4月、ほかは2015年4月時点)。
- 市町村の職員のうち、土木技術者は約3%(902,577人中26,044人)です(同じ資料の PDF の12ページ目。2015年4月1日時点、政令市と一部事務組合を除く)。
- 地方公共団体へのアンケートでは、舗装の点検をしていないのが都道府県の2割・市町村の8割、舗装をいつ敷いたかを把握(記録)していないのが都道府県の1割・市町村の5割でした(国土交通省「点検要領策定に関する状況報告(舗装)」PDF の3ページ目)。
- 高速道路・直轄国道と、点検をしている多くの都道府県は、専用の車両でひび割れ率などを測っています。一方で、大部分の市町村は点検(計測・記録)をしていません(同じ資料の PDF の7ページ目)。
人の手間がかかり、点検できていない道路が多い。写真のマスを安く判定できれば、見て回れる範囲を広げられるかもしれない、というのが出発点です。
参考にした数え方
舗装の点検では、路面を0.5m角のメッシュに区切り、メッシュごとにひびが「面状」か「線状」かを見て、ひびの入った面積の割合(ひび割れ率)を出す数え方があります(「大阪府舗装点検要領」令和8年3月、PDF の15ページ目。日本道路協会「舗装調査・試験法便覧」の規定によるメッシュ法)。
今回はこれを参考に、マスごとに「ひびがあるか」と、それに近い「1本か、2本以上(網の目を含む)か」を聞きました。ただし、マスは0.5m角ではなく約1m角で(0.5m角では写真の中で小さすぎたため)、分け方も面状・線状ではないので、この結果から正式なひび割れ率は計算していません。
題材:RDD2022 の写真を約1m角のマスに切る

写真は、道路の傷みを集めた公開データ RDD2022 の日本の写真(600×600px、車のダッシュボードから前を撮ったもの)を使いました。
RDD2022 の写真には、カメラの高さや向きが付いていません。そこで全部の写真で次のように仮定し、地面の上の四角が写真のどこに写るかを計算しました。
- カメラの高さ:1.3m
- 焦点距離:430px(横の画角で約70度)
- 水平線:写真のちょうど真ん中の高さ
この仮定で、前方2.5〜6.5m・左右±2m(幅4m、だいたい車線1本ぶん)の路面を1m刻みで16マスに区切りました。手前の列の両端は写真の外に出るので、1枚から14マスです。それぞれのマスの四隅を写真の上の点に直し、320pxの正方形に引き伸ばすと、真上から見たマスの画像になります(320枚から4,480マス)。

採点したのは、いちばん手前の列(2.5〜3.5m)の真ん中の2マスです。奥の列ほどぼやけるので、まず判断のつきやすいマスで試しました。手前のマスでも、元の写真の中では縦60pxほどしかありません。
正解は筆者が付けました
正解は、筆者が120マスに1つずつ「無傷/1本/2本以上(網の目を含む)/判断できない」を付けました。RDD2022 にも傷みを囲った箱が付いていますが、マスの割り方と合わないので使っていません。120マスは、RDD2022 の箱で「ひび」とされたマス40・傷みの注釈が1つも無い写真のマス40・それ以外のマス40から選びました。
| 筆者のラベル | マス |
|---|---|
| 無傷 | 47 |
| 1本 | 34 |
| 2本以上(網の目を含む) | 26 |
| 判断できない(車・白線などで路面が見えない) | 13 |
判断できない13マスを除いた107マス(ひびあり60・無傷47)で採点しました。細いひびか影か、1本か2本かは、付けながら迷ったマスも多くありました。
ラベル付けには専用の画面を使い、120マスを6分ほどで付け終えました(画面を開いてから最後のマスを保存するまで6分以内。1マスあたり約3秒)。あとの「考察」で、この時間を人の判定の目安に使います。
各 AI に聞いたこと
どの AI にも、同じマスの画像を1枚ずつ渡しました。Jev と Clairic には、次の文脈の文も渡しています。
A square patch of road surface about 1 m by 1 m, seen from above. It was cut from a dashboard photo of a road in Japan and stretched to a square, so it can be blurry and the far edge is the least sharp. Judge the asphalt itself: a crack is a dark line with ragged edges in the pavement. Paint, a manhole cover, a shadow, water, tyre marks, a joint between lanes and a clean sealed line are not cracks.
Jev
- モデル:
jev-1.14.0(画像の入力は、公式には試作の機能です。TypeSafe の資料に「Images and Box questions aren't yet up to our standards to call ready for production.」とあります。ヘッダTypeSafe-Danger-Zone-Images: trueが要ります) - 渡すもの:マスの画像(state に1回だけ入れ、問いからは名前で呼ぶ)と、上の文脈の文
- 問い:はい/いいえで答える問い(noul)を4つ。答えは「はい」の確率(0〜1)で返ります。
- crack:ひびが1本以上あるか(
Is there at least one crack in the road surface in `photo`?) - multi:ひびが2本以上か、網の目か
- patch:補修した跡(新しいアスファルトの四角)があるか
- notroad:大半が路面以外(車・縁石・歩道・白線など)か
- crack:ひびが1本以上あるか(
- 1マスのリクエスト:Jev 1本(4問をまとめて聞く)。入力は1マス778トークンです。
点数には crack の確率を、「2本以上か」には multi の確率が0.5以上かを使いました。patch と notroad は、ひびと見間違えそうなものを別に聞くためのもので、採点には使っていません。
Clairic
- モデル:
@cf/cloudflare/clairic(Cloudflare Workers AI。Cloudflare のブログで紹介された、値を抜き出すのが得意なモデル) - 渡すもの:同じマスの画像と、同じ文脈の文
- 問い:数で答える項目(estimate)を2つ。ひびの本数(0〜6。網の目は6と数える)と、壊れている割合(0〜100%)
- 1マスのリクエスト:Clairic 1本。入力は1マス488トークンです。
点数には、本数の答えと一緒に返る平均(mean)を、「2本以上か」には本数の答え(value)が2以上かを使いました。壊れている割合は採点に使っていません。
Jev+Clairic
Jev の crack の確率に、Clairic の本数の平均を6で割ったもの(0〜1になる)を足して点数にしました。Jev は「ありそうか」、Clairic は「何本ありそうか」と、違う見方の2つを足す形です。リクエストは1マス2本(Jev 1本・Clairic 1本)です。
Claude(Opus 5.5・Sonnet 5.5・Haiku 5.5)
- モデル:
claude-opus-5-5・claude-sonnet-5-5・claude-haiku-5-5(思考の深さ(effort)はモデルの既定のまま) - 渡すもの:マスの画像と、次の問い。文脈の文は渡していません(「白線・補修の継ぎ目・影はひびではない」とだけ書いています)。
The image is a square patch of road surface about 1 m by 1 m, seen from above. It was cut from a dashboard photo and warped to a top-down view, so it can be blurry, and part of it may be a car, a painted line, a kerb or a shadow.
Answer about cracks in the road surface only (not painted lines, joints of patches, or shadows):
- crack: your probability from 0 to 100 that there is at least one crack in the road surface.
- multi: your probability from 0 to 100 that there are two or more cracks, or a net of cracks like alligator skin.
- count: "0" (no crack), "1" (one crack), "2" (two or more, or a net), or "x" if the road surface cannot be judged.
Reply with only one line of JSON, nothing else: {"crack": <0-100>, "multi": <0-100>, "count": "<0|1|2|x>"}
- 1マスのリクエスト:Claude 1本。入力は1マス1,008〜1,033トークン、出力(考えた分を含む)は平均24〜148トークンでした。
点数には crack を、「2本以上か」には count が "2" かを使いました。
共通の条件
- 判定の閾値:どの AI もマスごとに「ひびがありそう」の点数を出すだけなので、何点以上を「ひびあり」にするかの閾値が要ります。点数の物差しは AI ごとに違う(Jev は確率0〜1、Clairic は本数の平均0〜6、Claude は0〜100)ので、同じ値の閾値は使えません。そこで閾値そのものではなく決め方をそろえ、筆者が「ひびあり」にした60マスを AI ごとに点数の高い順に並べ、54番目(9割)の点数以上を「ひびあり」にすると前もって決めました。どの AI も「ひびのマスのうち54前後を拾える閾値」にそろえて、無傷の47マスをどれだけ「ひびあり」と言ってしまうかを比べる形です。同じ点数のマスがあると54より多く拾います。閾値は、採点と同じマスで決めています。結果として、閾値は AI ごとに次のようになりました。
| AI | 点数 | 閾値(これ以上を「ひびあり」) |
|---|---|---|
| Jev+Clairic | P(ひび)+本数の平均÷6 | 0.46 |
| Jev | P(ひび)(0〜1) | 0.24 |
| Clairic | 本数の平均(0〜6) | 0.92 |
| Claude Opus 5.5 | crack(0〜100) | 20 |
| Claude Sonnet 5.5 | crack(0〜100) | 15 |
| Claude Haiku 5.5 | crack(0〜100) | 8 |
- 送った言語:問いと文脈の文は英語です。
- 時間:1マスの中央値です。Jev と Clairic は API の往復の時間、Claude は Claude Code の CLI が返す API の時間(CLI の起動は含まない)です。
- 費用:トークン数×公式の定価で、請求額ではありません。単価は100万トークンあたり、Jev が入力0.042ドル(出力は無料)、Clairic が入力0.10ドル、Claude は Anthropic の定価で Opus 5.5 が入力4ドル・出力20ドル、Sonnet 5.5 が2ドル・10ドル、Haiku 5.5 が0.10ドル・0.50ドルです。Claude はキャッシュを使わない1回ずつの呼び出しとして数えました。
- Claude の聞き方:Claude Code の CLI から、既定のシステムプロンプトと道具を外し(システムプロンプトは1行)、画像をメッセージに入れて1マス1回ずつ聞きました。API を直接呼ぶのに近い形です。
- 実験の日:Jev と Clairic は2026年11月2日、Claude は2026年11月3日です。
結果

| AI | 正解(/107) | 無傷を「ひびあり」(/47) | ひびを「無傷」(/60) | AUC | 1マスの時間 | 1,000マスの費用 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Jev+Clairic | 99 | 2 | 6 | 0.943 | 未計測 | 0.081ドル |
| Claude Opus 5.5 | 95 | 6 | 6 | 0.944 | 1.8秒 | 5.5ドル |
| Jev | 94 | 7 | 6 | 0.940 | 0.2秒 | 0.033ドル |
| Clairic | 91 | 10 | 6 | 0.926 | 0.4秒 | 0.049ドル |
| Claude Sonnet 5.5 | 91 | 11 | 5 | 0.933 | 1.2秒 | 2.3ドル |
| Claude Haiku 5.5 | 63 | 44 | 0 | 0.907 | 1.5秒 | 0.18ドル |
- 「ひびを『無傷』」がどれも5〜6なのは、ひびのマスの9割を拾う閾値にそろえたためです。差が出るのは「無傷を『ひびあり』」のほうです。
- AUC は、ひびのマスと無傷のマスを1つずつ取り出したとき、ひびのマスのほうに高い点数を付けている割合です(全部の組でそうなら1、でたらめなら0.5)。判定の閾値を決める前の、点数の並びの良さを表します。
- Jev+Clairic は Jev と Clairic に別々に聞いたので、合わせた時間は測っていません(単体は Jev 0.2秒・Clairic 0.4秒)。
- Haiku は、無傷の47マスのうち32マスと、ひびのマスの7マスに、同じ8という点数を付けました。ひびのマスの54番目の点数がちょうど8だったため、閾値が8になり、8の塊がまとめて「ひびあり」になっています。閾値を8の塊のすぐ上の10にすると、ひびのマス60のうち53を拾い、無傷を「ひびあり」としたのは12マスでした。
判定の例(Jev)

Jev の閾値(P(ひび) 0.24以上を「ひびあり」)で、正解と不正解のマスを2つずつ選んで並べました。参考に、同じマスの Opus の点数(閾値は20)も添えています。
- ひびありを「ひびあり」(正解):はっきりした1本のひび(P(ひび) 0.95)と、網の目(0.98)は、Jev も Opus も高い点数を付けました。
- 無傷を「無傷」(正解):何もない路面(0.10)と、白線のある路面(0.12)。白線をひびと取り違えてはいません。
- ひびありを「無傷」(不正解):細い2本のひび(0.23)は閾値のすぐ下で、Opus(55)は拾いました。端のかすかな1本(0.21)は、Opus(12)も見落としています。
- 無傷を「ひびあり」(不正解):舗装の継ぎ目の線(0.28)と、かすれた白線(0.36)。どちらも Opus(40・52)も「ひびあり」にしていて、ひびに似た線に引っぱられた外れでした。
2本以上かどうか
採点した107マスで、各 AI が「2本以上」と答えたマスと、そのうち筆者も2本以上にしたマスを数えました(Jev+Clairic は本数の答えを持たないので入っていません)。
| AI | 「2本以上」と答えたマス | そのうち本当に2本以上 | 当たった割合 | 2本以上のマス26のうち見つけた数 |
|---|---|---|---|---|
| Jev | 19 | 13 | 68% | 13 |
| Clairic | 18 | 15 | 83% | 15 |
| Claude Opus 5.5 | 15 | 13 | 87% | 13 |
| Claude Sonnet 5.5 | 11 | 10 | 91% | 10 |
| Claude Haiku 5.5 | 9 | 9 | 100% | 9 |
無傷のマスを「2本以上」と答えた AI はありませんでした。外れは、筆者が1本にしたマスです。
分かったこと
ひびの有無は、Jev でも Opus と同じくらい当たり、費用は約170分の1
正解の数は Jev+Clairic 99・Opus 95・Jev 94と近く、1,000マスの費用は Jev 0.033ドル・Jev+Clairic 0.081ドルに対して Opus は5.5ドル(Jev の約170倍)でした。1マスの時間も、Jev 0.2秒に対して Opus 1.8秒です。今回のケースでは、精度は維持しつつ、全部のマスに聞いても費用と時間が気にならない、というのが Jev の強みでした。
上位3つは点数の並びがほぼ同じで、正解の差は判定の閾値しだい
AUC は Opus 0.944・Jev+Clairic 0.943・Jev 0.940で、ほとんど差がありません。判定の閾値を「ひびのマスで54番目に高い点数」から「55番目に高い点数」に1つだけ動かすと、無傷を「ひびあり」とした数は次のように変わりました。
| AI | 54番目の点数を閾値に | 55番目の点数を閾値に |
|---|---|---|
| Jev+Clairic | 2 | 6 |
| Claude Opus 5.5 | 6 | 16 |
| Jev | 7 | 7 |
| Clairic | 10 | 13 |
| Claude Sonnet 5.5 | 11 | 11 |
| Claude Haiku 5.5 | 44 | 44 |
数マスの差は、閾値の位置の揺れの中に入ります。正解も筆者1人が付けたものなので、この107マスだけで上位3つの優劣は言えません。Haiku のように同じ点数を多くのマスに付ける AI は、閾値の決め方によって結果が大きく変わります。
本数は、「2本以上」と言えば当たるが、見落としが多い
どの AI も、「2本以上」と答えたマスは68〜100%が本当に2本以上でした。ただ、2本以上のマス26のうち見つけたのは9〜15マスで、半分前後を「1本」か「無傷」と答えています。手前のマスでも元の写真では縦60pxほどで、細いひびが1本か2本かは、筆者もラベルを付けながら迷いました。この写真の大きさでは、目で数えるのに近い判断の限界に近いのかもしれません(推測です)。Jev については、TypeSafe の資料(Jev 1.13)にも「jev-1.13 does not count reliably.」とあります(資料の例は文字などを数えるもので、写真のひびの話ではありません)。
場所を絞って聞くほど、無傷を「ひびあり」と言う割合は小さかった(条件の違う実験の比較)
マスに切る前に、Jev には写真をまるごと見せて「どこかに傷みはあるか」も聞いていました。傷みのある写真の9割を「ある」にできる閾値で比べると、傷みのない写真の47%を「ある」と言いました。RDD2022 の箱の周りを切り出して見せたとき(同じく9割を拾う閾値)は、傷みのないものを「ある」としたのは9%でした。今回のマスでは、無傷の47マスのうち7マス(15%)を「ひびあり」と言っています。
この3つは、写真も正解の付け方も別々で(写真まるごとと切り出しの正解は RDD2022 の箱で、注釈の漏れも混ざっています)、見せる範囲だけを変えた比べ方ではありません。それでも、「写真の中を探させる」より「場所を決めて具体的に聞く」ほうが当たりやすい傾向でした。マスは計算で機械的に切れるので、人が「ここを見て」と指さなくても、全部の場所に聞けます。
考察:人の点検と比べると
判定の費用は、人の手間と比べて小さい
今回の数字を、1車線ぶんの道路の長さに直しました。幅4m・長さ1kmの路面を約1m角に切ると4,000マスです。1,000マスの費用と1マスの時間(中央値)から計算すると、次のようになります。筆者がラベルを付けたときの1マス約3秒も、参考に並べました。

| 判定する人・AI | 1kmの費用 | 100kmの費用 | 100kmを1マスずつ順に判定した時間 |
|---|---|---|---|
| Jev+Clairic | 0.33ドル | 33ドル | 未計測 |
| Claude Opus 5.5 | 22ドル | 2,200ドル | 約200時間 |
| Jev | 0.13ドル | 13ドル | 約24時間 |
| Clairic | 0.2ドル | 20ドル | 約43時間 |
| Claude Sonnet 5.5 | 9.1ドル | 910ドル | 約140時間 |
| Claude Haiku 5.5 | 0.71ドル | 71ドル | 約170時間 |
| 筆者(画面で仕分け、参考) | ― | ― | 約330時間 |
- 測定車の調査の内業(解析・帳票作成など)は、100kmで100.4万円でした。比べるときだけ1ドル158円(2026年11月2日のレート)で円に直すと、Jev の13ドルは約2,100円で内業の約500分の1、Opus の2,200ドルは約35万円で約3分の1です。
- 筆者が1マス約3秒で仕分けると、100kmで約330時間(1日8時間で約42日)です。Jev は1マス0.2秒で、1マスずつ順に聞いても約24時間でした。同時に何本も聞けばさらに短くなるはずですが、測っていません。
- Opus は1マス1.8秒で、筆者の約3秒と同じくらいの速さです。速さで人と差がつくのは、Jev の0.2秒のほうでした。
残る費用は、写真を撮ることと人が確かめること
判定の費用がほとんどかからなくなっても、写真を撮る費用と、AI が「ひびあり」としたマスを人が確かめる手間は残ります。255万円の測定車の個票でも、測定(外業)が54.6万円、車と装置(機械経費)が84.3万円で、費用の半分以上は判定の外にありました。今回の費用には、写真を撮る費用を入れていません。
人が確かめる手間は、AI が絞った分だけ減らせます。今回、無傷の47マスのうち Jev が「ひびあり」にしたのは7マス(15%)で、ひびのマス60のうち54マスを拾いました。ただし120マスは選んで集めたもので、実際の道路でひびがどれだけあるかによって、人が見るマスの数は変わります。
正式なひび割れ率の代わりにはならない
測定車は、幅1mmのひびまで見分けられることを確かめた技術がカタログに載っています。今回採点したマスは、元の写真の中で縦60pxほどしかなく、1画素が路面の約1.7cmにあたります。見ているのは約1m角に「ひびがあるか」だけで、0.5m角のメッシュからひび割れ率を出す正式な点検の代わりにはなりません。
一方で、国のアンケートでは市町村の8割が舗装の点検をしていませんでした(上の国の資料)。正式な点検の代わりではなく、調査範囲拡大・調査間隔縮小を狙った軽微な調査なら、この費用と速さで使える余地がある、というのが今の見立てです。
比較条件と限界
- 採点は107マス(ひびあり60・無傷47)だけで、正解は筆者1人が付けたものです。
- 120マスは、RDD2022 の箱で「ひび」・注釈の無い写真・それ以外を40ずつ選んだもので、実際の道路でのひびの多さとは違います。無傷を「ひびあり」とする数も、実際の道路では変わるはずです。
- 判定の閾値は、採点と同じマスで決めました(甘めに出ます)。
- Jev と Clairic には文脈の文を渡しましたが、Claude の問いはそれより短く、ひびではないものの並びも少なくなっています。
- 写真は RDD2022 の600pxのダッシュボードの写真だけで、採点はいちばん手前の列の真ん中の2マスだけです。
- カメラの高さ1.3m・水平線は真ん中、を全部の写真で同じと仮定しました。実際は写真ごとに違うので、マスの実寸はずれているはずです(誤差は測っていません)。
- Jev の画像の入力は、公式にはまだ試作の機能です。
- 時間と費用は、今回の呼び出し方での値です。費用は定価からの見積もりで、請求額ではありません。
- 1kmあたり・100kmあたりの費用と時間は、幅4m・長さ1kmを1m角で4,000マスとした換算です。写真を撮る費用は入っていません。採点したのは手前の列の2マスだけで、1kmぶんの写真から本当に4,000マスを判定できるかは確かめていません。
- 人と測定車の費用と日数は、条件の違う資料から引いたものです(高速道路のコンクリート舗装、ひび割れ率・わだち掘れ量・IRI をまとめて出す費用、計画の更新まで含む委託)。今回の判定と同じ仕事の値段ではありません。円とドルを比べるところだけ、1ドル158円(2026年11月2日のレート)で換算しています。
- 筆者の1マス約3秒は、マスに切った画像を専用の画面で1人が仕分けた1回の時間です(画面の起動から最後の保存までの6分以内を120マスで割った値)。付けながら迷ったマスも多く、正式な点検の目視とは違います。
- Claude は最初(2026年11月2日)、Claude Code の既定のシステムプロンプトと道具を付けたまま聞いていて、1マスの換算額が Opus 0.19ドル・Sonnet 0.09ドル・Haiku 0.0047ドルと、その分が大きく乗っていました。このページの Claude の数字は、すべて11月3日に聞き直した回のものです。
- Jev・Clairic の点数の作り方(Jev+Clairic の足し算、Clairic の本数の平均)と、判定の閾値の決め方は前もって決めましたが、比べた組み方は1通りだけです。
- 記事の図の写真は、RDD2022(CC BY-SA 4.0)の写真を切り出し・変形し、マスの枠を描き足したものです。写真を加工した図は CC BY-SA 4.0 で公開します(RDD2022 の配布元:RoadDamageDetector)。
UnlockJapan と TypeSafe・Cloudflare の間に、提携・報酬・提供の関係はありません。
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